家族のきもち
ダウン症のあるお子様を授かったご家族へ
私たち「スマイル21」メンバーの家庭には、それぞれ必ず、ダウン症のある人がいます。男の子だったり、女の子だったり、まだ小さくて可愛かったり、すっかり大きくなって頼もしかったり、一人一人がその人らしく、人生を謳歌しています。
ダウン症のある人の家族たちもまた、それぞれがその人らしく、人生を歩んでいます。
ダウン症のある人には、身体の病気や体質的な問題など、小さい頃からのケアを必要とすることが色々ありますが、実は「一緒にいると楽しい」というとても魅力的な特徴もあるのです。私たちは、もうそれに気づいています。
「スマイル21」メンバーがそれぞれの子育てエピソードを書いてくれました。ダウン症のあるお子さんを授かったご家族、そしてダウン症のある人を応援してくださる方に、ご紹介します。
エピソード 01
Kさん
Rちゃん(1歳)
私は、自宅で赤ちゃんを産みました。それくらい、お腹の赤ちゃんは、順調に経過をたどれていたし、ひたむきであったし、4時間を切る安産をくれました。
この赤ちゃんの出生は、まったく誰もが想像し得なかった、わが家にとって新世界の始まりでした。それは、おそらく誰にでも、ひょんなことから始まります。決して、特別なことではなく、いつでもどこにでも起こることです。今まで無意識に当たり前と思っていたことが、そうでないのです。私は、昨日までの価値観が一変する、という体験をしました。
喜怒哀楽、どんな感情も、素直に正直に他者へさらけ出すことは、実は、なかなかできません。人は、生きていくのに、自分を守るために、鎧や面をかぶってしまうことも多いものです。スマイル21の子たちは、それらを解放させる力を持っています。
とにかく21トリソミーの子たちは、特に小さいうちは身体が弱いようですが、意志が強いのだろうなと肌で感じます。彼らは、繕ったり装ったりしないです。自分をしっかり生きています。怒っている子は怒っている絵を描けます。淡色や原色、その時に合った感情に合わせて色を選んで、好き好きに、自由にのびやかに表現しているのを見て、私は感動しました。
我が子も、そばにいて、ひたむきに生きたいと強く思っている節を感じます。だから、私やこの子、家族に、天から与えられた課題に一緒に向き合って、純粋に生を全うしたいです。
エピソード 02
Hさん
Kくん(5歳)
長い間、赤ちゃんを待ち望んでいたパパとママを選んで、やってきてくれたKちゃん。とっても嬉しかったけれど、生まれてきたKちゃんにはいろんな合併症があると聞かされ、とても心配で、ママは毎日、泣いていました。
Kちゃんには、ファロー四徴症(心臓疾患)の合併症があり、すぐに手術をしたほうがいいと告げられました。その後、ミルクを自力で飲めるようになるまで病院で過ごし、生後2ヶ月でやっと退院でき、パパとママと3人の生活がスタートしました。
Kちゃんは、私達にとって初めての子供です。何もかも初めてづくしでした。「ダウン症」という意識がいつもどこかにあって、子育てに不安、心配だらけで、楽しいとはなかなか思えませんでした。
そんな私を元気にさせてくれたのが、同じダウン症のある仲間のママさん達でした。うちの子だけ・・・なんて思っていたので、「こんなにたくさんいるんだ」って知って、みなさんとても優しく、明るく前向きで、同じ悩み、わかってもらえると思えてすごく楽になりました。
Kちゃんは1才の時、白血病になりました。半年間の入院で抗がん剤治療を頑張りました。体調がよくなるまで、療育は受けられず不安でしたが、療育を再開すると、少しずつ成長が見られ、2才でひとり歩きをしはじめました。食事は、形のあるものを口にはしないので、5歳の今もペーストの形状です。スプーンを手で持ち、自分で食べるようになったのも、ごく最近です。でも、ママはそれだけでも嬉しいのです。
Kちゃんは、とても音楽が好きで、毎日、聴いています。歌っています。踊っています。楽器にも興味があり、音楽教室にも通い始めました。何か打ち込める事が見つかるといいなと思います。言葉はまだまだ喃語ですが、たくさん喋り、歌い、なんとなく言葉になってくれればいいかなーと思っているママも、この5年間で成長できた気がします。
Kちゃん、生まれてきてくれて、ほんとうにありがとう。これからも仲良くしようね。
エピソード 03
Mさん
Yちゃん(6歳)
今、娘は6歳。2人の兄を含む大家族で、毎日にぎやかに楽しく過ごしています。誕生直後は、こんな穏やかな生活を送れるようになるとは考えてもみませんでした。
娘は我が家の待望の姫として、産声をあげました。娘の元気な産声は、それだけで私に最高の喜びをもたらしてくれました。それが一転、翌日には主治医より「心疾患がありダウン症の可能性も否定できない」旨を告げられ、正に暗闇のどん底に引きずり落とされた感覚でした。
幸いにも2人の兄が通っていた幼稚園は、障がい児を積極的に受け入れていましたし、娘の入園に関しても前向きに検討してくださいました。しかし、保育園やひまわり教室(多摩市の児童発達支援施設)への通所など他の選択肢もあり、就学までの貴重な時間を、娘がどこで過ごすことが最良なのか、悩みに悩みました。
『おたくのお子さんは〇〇だから△△が一番!』と、専門家からこの言葉を言われることを期待していましたが、今になって思えば、娘のことを一番に理解していたのは紛れもなく母親の私だったはずです。最終的には、ひまわり教室を経て幼稚園という道を選びました。
幼稚園では、何事にもスローペースな娘ではありますが、すべての課題・行事に、他の園児と同様に参加させてくださいます。先生やお友達の暖かい眼差しの中で着実に成長している娘を見ていると、「この幼稚園で本当に良かった」と心から思います。そして、ある先生から言われた言葉を改めて思い出します。
『親が考えて選んだ道に間違いはないから』
エピソード 04
Sさん
Tくん(11歳)
Tちゃんは一言で言うと面白い!イエス・ノーの意思表示がハッキリとしていて、時に融通がきかない、頑固な性格。
怒りっぽいし、ちょっと難しい感じ。でもその一方で優しくて、賢くて、頑張り屋さんで、気が利いて、いい男である。
Tちゃんをよく知る人からはジェントルマンですよねって言われるほどだ。
11年前、この子が産まれたときには、こんな日が来るとは想像もつかなかったな(笑)今はTちゃんが居ない生活は考えられない。
小学6年生になったTちゃんは、毎朝8時30分にスクールバスに乗り、放課後はデイサービスに行くため、帰宅は18時である。デイサービスが大好きで、特に土曜日は長い時間遊べるし、大好きなお弁当を買いに出かけて、みんなと食べられるので喜んでいる。決して愛想がいい方ではないが、通い慣れた場所、慣れ親しんだ人には自然体の自分を出せているようで、下級生のお世話をしたり、一緒におもちゃで仲良く遊んだりしているようだ。TちゃんにはTちゃんの居場所がちゃんとあることに、親として嬉しい気持ちになる。
Tちゃんが産まれたとき、私はショックで悲しくてたくさん泣いた。でも、今となっては、全く悲観することはない。
Tちゃんは全然可哀想ではない。好きなものを食べて、大好きなアニメやゲームをとことん楽しんで、よく眠る。
そんなTちゃんを見ていると、幸せそうに見えるからだ。出来ないこと、苦手なことはあるけれど、それはみんな同じ。
これからもTちゃんの成長を、家族みんなで楽しみにしている。